Central East Tokyo と「さんかく問屋街」

▽20 鳥山貴弘、唐品知浩、勝亦優祐

以前「さんかく問屋街アップロード」前編と後編にわけご紹介したCET(セントラルイーストトーキョー)。今回は、現在の問屋街エリアで生まれ育ち、地元で三代続く日東タオル株式会社とモラルテックス株式会社の代表取締役も務める鳥山貴弘氏、街の外から新規参入したプレイヤーとして活動する唐品知浩氏、そして当メディア編集長の勝亦優祐に、自身の活動にCETの痕跡を絡めながら、未来のさんかく問屋街に向けての抱負を語ってもらいました。

聞き手:勝亦優祐
書き手:瀧瀬彩恵

変化や新しさを恐れない仲間を増やす

ー現在のさんかく問屋街エリアとの関わり方。

2022年11月、祖父が創業した日東タオル株式会社の代表に就任しました。また、横山町奉仕会や問屋街活性化委員会の常任委員、産学連携チームのリーダーを務めるなど地域活動にも参加しています。問屋の皆さんの代表としても、若手としても、今まで以上に責任感を持って地域と会社の関わりの大切さを実感しながら物事に取り組むことを心がけています。

ー過去開催された「CET」に対して思うこと

叔父の鳥山和茂がキーパーソンとなっていた取り組みです。よく喋り夢に生きるアツい人で、家族曰く僕にも似たところがあるようです(笑)開催当時、僕は東京から離れていたので完全に傍観者でしたが、自分も人と人を繋ぐ仕事がしたいという思いで、これまで様々な職種に就いてきました。

2014年に家業に専務として戻った時、問屋としての商売が徐々に難しくなりつつあった街の中でもCETの名残がある店舗が光を放っていたのが印象的でした。和茂が同年夏に急逝した時も、CET関係者で開いたお別れの会を通し、この街にたくさんの息吹や爪痕を残した大勢の人たちの存在、また和茂が非常に慕われていた事実を知り、彼の宝の山のような人脈を途絶えさせてはいけないと強く思いました。

そこで和茂が代表を務めていた会社を日東タオルに吸収合併しつつ、彼がご縁あったCET関係者の皆さんに挨拶に伺い協働の意向をお伝えするなど人脈の「繋ぎ直し」も行いました。2017年にオープンしたショップ兼カフェ「モラルテックス・ラボ」もCET関係者経由の縁もあって完成した場所です。

ー今後さんかく問屋街に関わるうえで試みたいこと・大事にしたいこと

今まさに変化のターニングポイントに立っている実感があり、今後この街が何を生み出すかに関心があります。問屋街は、交通の便など好立地にあるので、まだまだ潜在能力はあると思っています。街全体の世代交代が進み、次の指針を探しているこの状態も、可能性にあふれていると思います。

新しい取り組みが行われる時、僕の街での役割は、色んな考えを持つ地元の皆さんの合意を得て仲間を増やすこと。「変化や新しいことは怖い、だから触れない」という方が多い肌感覚がありますが、それで消極的な状況が起きているのも事実。地域の皆さんが問屋に求める役割も変化する必要があると感じますし、「変わっていきたい」という方々をいかに仲間にできるか、そして「怖い」という方に「新しいことは怖くないので触ってみませんか?」と伝えて一人でも多くの協力を得ることが僕の使命です。

どんなことも最終的には「WHO=誰と」やるか。それが決まりさえすればプロセスも楽しいし、結果がどうであれ前向きな受け止め方をできると思います。居心地や雰囲気といった形にならないものも作りながら、楽しく主体的に人が繋がれたらいいですね。もちろん僕自身も「鳥山さんがやってる会社/活動だから」と、誰かにとっての「WHO」であり続けたいです。

<鳥山貴弘 プロフィール>
タオルの新しい可能性を探るモラルテックス株式会社・代表取締役、創業74年・祖父が創業した老舗タオル問屋の日東タオル株式会社・代表取締役社長。商社勤務、経営コンサルタント、高校教諭を経て、2014年日東タオルの専務取締役に就任。2017年に千代田区東神田にカフェを併設したタオルセレクトショップ「モラルテックス・ラボ」をオープン。日本橋の地域活動にも積極的に参画。
https://www.towel.co.jp

アートは「読めない」ことを面白がれる

UR都市機構の土地にテントとキッチンカーを常設し「+PLUS LOBBY」というスペースを運営しています。問屋街は商売の性質上「一見さんお断り」という張り紙も多く一見閉鎖的にも思えますが、じっくり話を聞くと実はなんらかの方法で新しい人々とも繋がりたがっている節がある。「+PLUS LOBBY」は老舗の問屋、地元の皆さん、新しくこの街にやってきた事業者などをつなぐ結節点として、毎週イベントを行いさまざまな方に気軽に足を運んでもらっています。他にもURや問屋の皆さんと組み、空きビルの利活用や新規事業の参画推進を目的とした公募制プログラム「さんかくプログラム」の企画立案を担当しました。このプログラムがきっかけで「TOIビル」が誕生しています。総合すると、自分の活動は情報や人を集め繋げる流れを作ったり、そのフィードバックを行っていると言えます。

ー過去開催された「CET」に対して思うこと

リアルタイムでは名前を少し聞いたことがある程度。影響力の強さを知ったのはこの街に来てからで、さらに仕事柄、街のリノベーション関連の話題に触れた際、現在その分野で重鎮となっている方のほとんどがCET出身者だということが後からわかりました。

僕自身、イベントの企画運営を仕事にするなかで集客や価値がある程度「読める」ことを重視しているため、受け取り方が千差万別なアートをイベント化することに関しては未経験で、実際敬遠してきました。でもアートがあるから、普段であれば相容れることがない物事や人が同じ場に居合わせたり、同じ方向を向くことができるのでは。そういう機会はすごくワクワクするものだと思います。

ー今後さんかく問屋街に関わるうえで試みたいこと・大事にしたいこと

街に新規参入したプレイヤーの中でも地元の人々に顔が知れた存在という自負があるので、今後新しい試みを行う際にやらんとしていることをより多くの人々に伝える、中間的な領域を担うのが自分の役割だと思います。そして老若男女が「表現」できる場所や機会がこの街にあれば、という思いでやっています。

イベントをやる時、著名人を呼べば集客やそこで起こることも大体「読めて」しまう。それより身近にいる「意思ある素人」を炙り出し、その集合体を作るほうが、これまでどんなにアプローチをしてもリーチできなかった人々が集まりやすい気がしています。極論、居酒屋でくだ巻いてるおじさんとか(笑)そっちの想定外な人の話のほうが圧倒的に面白いし「読めない」。そういう時にアートを切り口に色んな人と関わりながら、面白さを見出して何ができるか考えてみたいです。

<唐品知浩 プロフィール>
映画とアウトドアとファミリーを掛け合わせた「ねぶくろシネマ」、「いっぴんいち」などを手がける合同会社パッチワークスのアイデア係長。 「+PLUS LOBBY」facebookページ|https://www.facebook.com/pluslobby

面白い人たちがいられる環境づくり

ー現在のさんかく問屋街エリアとの関わり方

ひとつはUR都市機構からの依頼でエリアのリサーチを行い、街が直面する状況から予測し各種提案を行うこと。実は「さんかく問屋街アップロード」はこの業務から派生して立ち上がったメディアです。。首都圏と地方を往来しながら活動する中で、街の文脈や質を尊重できず、人口が集中するエリアでは、経済性が先行した開発が起きたり、人口が減少するエリアでは地域再生の取り組みが困難な状況を見てきました。だから街のリアルな活動やそこに携わる人々に関する情報を記録し残すことで、長期的な計画を考える際に参照できるものを作りたいという思いがありました。

もうひとつは、「SANGO」の運営(当メディアの取材記事はこちら)。初期投資を抑え、周辺相場より低い賃料を設定する等の工夫を行い、従来いなかったタイプの若手スタートアップやクリエイターが問屋街に「いられる」環境づくりを努めています。ここで何が起きていくかは、今後中長期的に運営していく中で見えてくるはずです。

ー過去開催された「CET」に対して思うこと

トップダウンの “まとまった” イベントでなかったからこそ、同時多発で主体的な動きが生まれ、関わった人の数ほど「CETとは何か」が生まれていたことが特異だと感じます。大前提として当時の都市空間や状況があり、それに関係者が触発された結果、CETがCETたらしめられたのでは、とも思います。

ー今後さんかく問屋街に関わるうえで試みたいこと・大事にしたいこと

どこで活動していても共通した原動力は、シンプルに「面白い人を呼んでその人たちがいられる環境づくりをしたい」ということ。ハード面のデザイン以外にも、人の流入やそこで起きる状況など含め広義の「構造(アーキテクチャー)」を実践したい。そこにどれだけ多くの人が参加できるかを考えていきたいです。

そしてさんかく問屋街の特殊性をヒントにした「何か」に挑戦したいです。ここには都内でも高密度で敷地単位が小さく、道路率が高いことで、立地の良い場所ながら大型開発がおきていないという特殊な状況があります。そこに物理的な在庫を抱える問屋機能が集約することで、細長いペンシルビルタイプの空間が多い稀な状況なんだそうです。道路、限られた人しかアクセスできない問屋の上階部分、階段室、屋上の空間など、使われていない空間資源を思い切って開くとどんな事が起きるだろうとワクワクします。屋上同士をつなげあうなど、実験的な試みもしてみたいですね。

<勝亦優祐 プロフィール>
空間と使い手の持続可能な関係性を生み出し、新しいスタンダードを社会に実装することを目指す建築家チーム〈勝亦丸山建築計画〉代表。「その場所や前提の条件を探り(RESEACH)、そこに何が必要かを考え(DESIGN)、現場での実践を還元させる(OPERATION)」ことを指針とする。建築やインテリア、リノベーションの設計・監理を中心に、「デザインオペレーション」の手法を用いて事業の企画から運営まで行うほか、行政・民間の双方と連携しながらリサーチ、コンサルティング、プロダクト開発など多岐にわたる活動を行う。

東京ビエンナーレ
セントラルイースト東京 2023/OPEN START

このエラーメッセージは WordPress の管理者にだけ表示されます

エラー: アカウントに接続できません。

アカウントを接続するには、Instagram Feed の設定ページに移動してください。