馬喰町の日常に溶け込む仕事と暮らし
生活機能共有型SOHO「SANGO」の未来図

▽09 生活機能共有型SOHO「SANGO」

聞き手/書き手:Yuuki Honda
撮り手:Ban Yutaka

生活機能共有型SOHO「SANGO」が、2022年3月に開業する。

SOHOは、自宅と事務所を兼用する物件やそのワークスタイルを指す用語で、Small Office/Home Officeの略称だ。これにいわゆるシェアハウスを組み合わせたのが「SANGO」、生活機能共有型SOHOというわけだ。

SANGOの断面イメージ。1階は小さな飲食店。2,3,4階はそれぞれ専有部、5階はキッチンと屋上。

「SANGO」は、もともと問屋だった旧耐震基準のビルに耐震も含めた改修を加えた5階建てで、1階と地下は飲食店、2階から4階までは一般向けの賃貸物件、5階にはキッチンと屋上があり、共有スペースになっている。賃貸物件となる各部屋は約30m²と大きめのワンルームになっており、天井、壁、床を工事するようなものでない限り自由にできるため、入居者のイメージに沿った部屋を作ることが可能だ。

この自在性を特徴とする「SANGO」を手がけたのが、当メディアの編集部でもある建築設計事務所「勝亦丸山建築計画」。
今回は、これまで横山町・馬喰町問屋街のプレーヤーに話を聞いてきた「勝亦丸山建築計画」の勝亦優祐と丸山裕貴に、「SANGO」を作るまでの構想と、開業してからの未来図について聞いた。

改修中の現場、5階の元事務所。室内を解体して屋外テラスへと改修される予定だ。photo by Ban Yutaka

––––広いワンルームを自由にカスタマイズできるという趣向が特徴ですが、なぜこのコンセプトを打ち出したのでしょうか。

丸山  一つの部屋に自分の場所も欲しいし事務所も構えたいという人をイメージして考えました。各部屋が仕事場も兼用しているシェアハウスなので、入居者同士が何かを始めることもイメージしています。

勝亦  実際に自分が20代後半で起業したばかりの時に住むならと想像して、設備や家賃を決めたんです。ユニットバスではなくて、自分たちだけのテラスがあってとか。気分を変えるために「MIDORI.so」のポップインで仕事しようとか、疲れたらシャワーを浴びて一息入れたりとか、SOHOならではの働き方もできます。あと週末は入居者みんなで知り合いを呼んで、屋上でパーティーを開いたりできたら良いなって。そういうSOHOとシェアハウスの良いところが混ざりあった雰囲気が絶妙じゃないかなと。

個室の様子。水回りは共有部にあるので、家具などで自由にカスタムできる大きなワンルームとなっている。
改修中の「SANGO」、6階の元住居スペース。右奥には商品を運ぶエレベータが見える。photo by Ban Yutaka

––––住むコワーキングスペースみたいな感じですね。

勝亦  まさにそうです。普通の家に仕事場もあると閉じこもり気味になると思うんですが、このエリアは人同士の距離感が近いので、外にも自然と足が向くと思います。

丸山  馬喰町にはローカルのコミュニティが残っているんです。この辺りで働いている人は、近くのお店の人のことをだいたい知っています。「SANGO」があるエリアは特にそういう繋がりが強くて、地元の人と建物とサービスが混ざり合ってるんです。

勝亦  東京駅までタクシーで15分、電車でも数駅の都心のど真ん中なのにローカルのコミュニティが残っているのは面白いですよね。僕らもこのエリアで仕事をするようになって2年経ちますが、住んでいるわけでもないのによく声をかけられますから。だからよっぽど引っ込み思案じゃなければ、引っ越して数ヶ月で街の人に名前を覚えてもらえると思います。

「SANGO」の改修現場。屋上からの風景

––––この辺りにはどんな方が多いんですか?

勝亦  歴史のある問屋街なので、やはり問屋で働いている人が多いです。そこに集まるバイヤー、技術者も含めたビジネスの先輩方もたくさんいます。だから入居者を迎える時に、このエリアの僕らの知り合いに挨拶しながら街を案内しようかと考えてるんです。

––––経験豊富な方々と繋がれるのは他の物件にはないポイントですね。

勝亦  一方で、休日は問屋がだいたい休みなので、若い人が増えます。車通りも少ないし、子どもがいても歩きやすいのか、20代〜40代ぐらい若い家族をよく見るんです。

丸山  年齢層が高めなイメージのある街ですけど、休日にカフェに行くと若い人ばかりです。家族連れには居酒屋があまり多くないこのエリアは良いのかもしれない。

足場の組まれた「SANGO」
歴史ある繊維問屋がひしめく通りに面している。

––––平日と休日で違った顔を見せてくれる街なんですね。

丸山  ここ数年このエリアは建て替えが続いているので、新しい人も入ってきて生まれ変わろうとしてるんです。そういう新しい流れや機運があるところに住めるのも、「SANGO」の楽しめる点かなと。馬喰町ごと面白がってくれると嬉しいですね。

勝亦  馬喰町にはまだ発見されてない魅力があるので、住みたい街ランキングとかに載っていない、手垢がついていない場所に住みたい人にも良いと思います。近くにはバーやカフェが併設されているホステル「CITAN」をはじめ面白い場所がたくさんあるので、ネットワークも広がるんじゃないかな。最寄り駅が多いのも良い点ですね。

丸山  そうそう。馬喰町、馬喰横山、東日本橋が近くて、浅草橋、小伝馬町も徒歩圏内だね。

勝亦  この利便性やローカルコミュニティの存在、生まれ変わろうとしているポジティブな雰囲気がある街が馬喰町です。そんな場所にある事務所と1Kのスペースを兼ねた家に光熱費を含めて20万以内で住めるのは、けっこう良い選択肢なんじゃないでしょうか。

入居者が自由に使える屋上はキッチンと一体的に使用可能だ。

上の対談でも触れられていた馬喰町周辺の開発だが、その勢いが急速な分、昔からある建物がその姿を消しつつあるという。
そこで連綿と紡がれてきた街の文化を未来へ残していこうと、UR都市機構が物件や土地を買い取って再編する活動を行っている。その一環で、もともと問屋ビルだった物件の活用事業者公募をUR都市機構が行い、これに勝亦丸山建築計画が選定された。今回はこの問屋ビルと「勝亦丸山建築計画」を繋いだUR都市機構の担当者からのコメントも掲載する。

「この建物は昭和50年代に建てられた衣装の装飾品を扱う問屋ビルでした。勝亦さん丸山さんが問屋オーナーの思いの詰まった部分を活かしながら、新しい機能を埋め込んでくれました。新たな街の一員として変化をもたらしてくれることを期待しています。」
UR都市機構 坪田華さん 功刀龍一さん

編集後記

「SANGO」の建設予定地近くでの取材を終えて帰る道すがら、お昼過ぎ、問屋街のあちらこちらで言葉を交わす方々を見かけました。「この前の企画が上手くいってさぁ」「あそこに新しいお店ができてたわよ」なんて、何気ないやり取りです。こうした会話が街の至るところで明日も見られるんでしょう、誰もが「またね」と手を振って別れていきます。そんな確かな繋がりがある場所に生まれる「SANGO」には、誰が住んで、どんな風を吹かせるのか。変わりゆく街を歩きながら想像が膨らみました。

物件情報

1F店舗

3組でシェアする「住めるオフィス」

※東京R不動産の詳細ページへ移動します。


勝亦丸山建築計画が運営するシェアハウスについては
こちら

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