MIDORI.soが馬喰横山で生み出す「良質なカオス」

中目黒や永田町、表参道に拠を構えるシェアオフィス「MIDORI.so」が、4拠点目となる「MIDORI.so Bakuroyokoyma」を新たに馬喰横山町にオープンします。
シェアオフィス/コワーキングスペースの概念が浸透していなかった2011年にオープンし、国籍や職種を問わず様々なメンバーが集まりながら、「働くこと」を問い続ける同施設。東東京エリア初となる「MIDORI.so Bakuroyokoyma」では、7階建ての1棟をまるごとリノベーションし、地域にひらいたMIDORI.soを試みます。

今回は、そんなMIDORI.soコミュニティオーガナイザーの増田早希子さん、涌井駿さんに、同施設の設計の一部を手がける勝亦丸山建築計画・勝亦優祐がお話を伺いました。馬喰横山町の新たなMIDORI.soは、「良質なカオス」をどのように生み出そうと考えているのでしょうか。


聞き手:勝亦優祐
撮り手:Ban Yutaka
書き手:和田拓也


地域にひらいていく馬喰横山町のMIDORI.so

勝亦 新たなMIDORI.soのオープン準備をすすめるなかで、馬喰横山町はどのような街だと思いましたか?

増田 馬喰横山町は昔から受け継がれたものが多く残っていますよね。東東京はそうしたものと新しいものが共存していると感じました。

勝亦 それこそ、馬喰横山町に新たにオープンするMIDORI.soには、問屋街の方々と連携したアップサイクルスタジオを1階に設ける予定になっていますよね。

増田 そうですね。刺繍ミシンやカッティングマシンRISOグラフプリンター、シルクスクリーンを導入してMIDORI.soのメンバーや一般の方々がものづくりをできるような場所にしたいと思っています。既に余った衣料を活用したブランドを立ち上げるプロジェクトも動いています。

涌井 1階には街にひらかれたカフェもオープンします。

工事中の1階の様子

勝亦 地域にひらいた「働く場所」にしていく、と。

増田 中目黒、表参道にあるこれまでの拠点は、地域というよりも、MIDORI.soの空間のなかでメンバーの繋がりを生みだしていくことに主眼を置いていました。今回馬喰横山町でオープンする拠点は、街にひらいて地域と繋がっていく点がこれまでと大きく異なるところだと思います。

涌井駿さん

勝亦 こうした試みにはどういった背景があるんでしょうか?

涌井 基本的には「おもしろければやってみたらいいじゃん!」というノリを大事にしているので、大仰な理由はそこまでないんです。

ただ社会全体をみれば、個人の興味関心や営みが中心にあったコミュニティのあり方から、企業が建物(ハード)を用意して文化形成を期待するあり方へと変化していきました。しかし、本質的には地域や街とともにかたちづくっていく、より本質的な場所づくりをしていく必要があると思っています。新しいMIDORI.soはこうした部分を意識しているとも言えますね。

増田 コミュニティという言葉だけが一人歩きしている状況にあるので、その言葉の使い方には慎重になっている部分はありますし、コミュニティは自然にできるものなので「コミュニティをつくるぞ!」という感じでもないんです。

増田早希子さん

涌井 MIDORI.soは「働くとは何か」という問いを突き詰めながら、人が働き方に幅を持たせて生きていけるように実験していくことが核にあって、結果として自然と面白い人が集まればいい。実験をしていくうえで自分たちの力だけでは限界がありますから、様々な人たちに関わってもらいながらシェアオフィスというかたちになっていきました。

増田 なりたちも前提も普通のシェアオフィスとは少し異なるんです。

「良質なカオス」はより良きコミュニケーションから生まれる

勝亦 場所があるから人が集まるのではなくて、働くひとりひとりが何かを追求して集まった結果、多様な力強い場所が生まれるということですよね。

増田 そうですね。単に場所を貸して、マネジメント側が受付になっているだけではいけないと思うんです。

勝亦 そのためには、働く場所を提供する側のファシリテーションは重要になってきますよね。

増田 それが一番重要だと思っています。普通のシェアオフィスとMIDORI.soの最大の違いは、それぞれの運営メンバーを「スタッフ」ではなく「コミュニティオーガナイザー」と位置付けていることです。受付でも管理人でもない。

勝亦 「コミュニティオーガナイザー」ですか。

増田 「コミュニティ」にかわる芯を食った表現を模索中ではあるのですが、サービスを提供する側と受ける側の間に隔たりがない、対等な関係性をつくるという意図があります。

勝亦 具体的にはどのような役割を担うのでしょうか?

増田 MIDORI.soのメンバーと密にコミュニケーションを取ったり、メンバー同士をつなげたり、困った時に相談に乗ったり、イベントを企画したり。もちろん掃除やコピー用紙の補充など、メンバーが気持ちよく働ける環境を整えることもするし、何でもやってしまう感じです。

どのオーガナイザーが誰とどのように話すか、誰と誰を繋げるか、オリエンテーションでは何を話すのか、やる意味は何なのかなど、「自分のオフィス」として愛着を持ってもらうためにコミュニティオーガナイザーがどのようにコミュニケーションをとるべきかの方向性はチームの中で明文化しています。

勝亦 ある程度の方向性だけきちんと示して、あとはそれぞれのコミュニケーションに任せているということですよね。

増田 そうですね。だからこそMIDORI.soには様々なバックグラウンドのオーガナイザーがいるんです。個々の利用者とのコミュニケーションがうまくはまるようにオーガナイザーの引き出しを多くして全体で補うようにしています。

生きることと働くことをシームレスに

勝亦 馬喰横山町では、どのようなMIDORI.soをつくっていきたいと考えていますか?

増田 単に場所貸しと施設運営をこなすのではなく、面白い場になるように様々な人に足を運んでもらったり人を繋げたり盛り上げる。そうやって場を「発酵」させていくのが、わたしたちの仕事だと思っています。

その結果、自分たちの思想に共感してくれる人たちが集まって、新しい仕事が生まれたり、面白い出来事が起きる、そんな場所を目指しています。

涌井 馬喰横山町でも、そういうものが実現できたらいいなと思います。パンデミックを経てオフィスの意義も下がったのは間違いないですが、それでもやはり人が集まってコミュニケーションをとることで生まれる何かが絶対にあります。それは多くの人が感じているんじゃないでしょうか。

仕事を自宅でやることが社会的に受け入れられるようになって、生きることと仕事がシームレスになるなかで、さらに柔軟な働き方の選択肢があってもいいと思います。そうした働き方を選択している人たちが集まると、仕事を通じて友達になることがすごくシームレスに起こるんです。名刺交換とは違う繋がり方というか。

特にフリーランスのかたはそうしたことは大事ですし、仕事を通じて生活も豊かになる。人と仕事の繋ぎ方を馬喰横山町という新しい場所でもやっていきたですね。ですから、地域の住民のみなさんや企業の方々など、様々なかたに一度みどり荘を覗きに来てほしいなと思います。

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MIDORI.soは「良質なカオス」を生み出すことをテーマにしていて、ルールもあまり設けていません。セキュリティが心配だから利用者以外が遊びにきてはいけないということもない。ただルールがない部分は、コミュニケーションで解決するんです。
システムやルールではなく、オーガナイザーのコミュニケーションや属人性で場の状況をつくっていく。馬喰横山町でもこうした考えをぶらさずに、良質なカオスを生み出していきたいです。(小柴美保:MIRAI-INSTITUTE株式会社 オーガナイザー)

小柴美保さん(左)

コワーキングスペース/シェアオフィスのみならず、建物や機能を提供することで場の化学反応を生み出そうという試みが東京の都市空間において行われてきました。しかし、場所が人を集めるのではなく、人が集まることで場所が規定されていく。それが自然と文化の孵化装置となっていくのだと、みどり荘のみなさんのお話を伺って強く感じました。バズワードや「コミュニティ論」に流されることなく、属人性と身体的なコミュニケーションをもってカオスを偶発的に生み出していくみどり荘。そんな彼らが馬喰横山町で生み出すカオスとはどのようなものなのかと、とてもワクワクさせてくれたのでした。

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