ぽっかり空いた穴の魅力
「さんかくプログラム」参画者募集!!

▽05 ぽっかり空いた穴の魅力

「日本橋横山町・馬喰町エリア参画推進プログラム(通称:さんかくプログラム)」。
先日、街を人と共創し、街会社とUR都市機構との協働でエンジョイワークスがスタートさせた、そのプロジェクトは、日本橋横山町馬喰町問屋街の中で空いてしまった穴を見つけ出し、それを埋めてくれる方を募集するものとも言えそうです。“穴”と言ってしまうと、聞こえは少々ネガティブかもしれませんが、穴は実に魅力的でワクワクするものです。想像と活用次第で、いかようにも変化させられる可能性をもっているのですから。


撮り手:勝亦優祐
書き手:大隅祐輔


幼い頃、友達の家が麓に建っている山によく遊びに行きました。彼の家は一緒に通っていた小学校からほど近く、放課後や休みの日に行って、腹ごしらえを済ませてからは辺りが暗くなる前まで、その山をよく探検しに回っていました。

普段は思い出すこともない、靄がかってはっきりとは見えなくなってきている記憶。それを今改めて呼び戻すと、別に何をしていたわけでもなく、何かを見つけてはひたすらに想像を繰り返していたように思います。図太い木の幹の模様を動物に例えたり、急に現れたヘビを何かの化身と言ってみたり。とにかく楽しかったんでしょう、想像/妄想をすることが。

山の秘密基地は何てことない洞穴にありました。誰かに取られるわけでもないのに、そこを僕らの陣地と言い、縄を張っていました。僕らは家とは違う、第二の秘密の拠点としていた。『スタンド・バイ・ミー』のツリーハウスよりも、もっとみすぼらしい場所を。洞穴を発見した際も今思えば、大変興奮する出来事だったように思えます。自分のお気に入りの物を持ち込んでいたか、いなかったか……そこまでの記憶は残っていませんが、見渡すとどうしても視界に入ってしまう机や教科書がある家の部屋よりも愛着をもっていたと思います。

ぽっかりと空いた穴は実に魅力的です。それを埋めることも、見つけ出すことも。『スーパーマリオブラザーズ』でだって、ひたすらに土管の上でかがんでみて、入れるかどうかを試していませんでしたか? おそらく、その時の心情はみんな一緒でしょう。空洞の先に、何か隠されているものがあるかも……と(何かがあろうが、なかろうが)想像し、ワクワクしていたからなはずです。

日本橋横山町馬喰町問屋街を上から覗いた景色。ビルが所狭しと建ち並んでいますが、この所々に使われていない穴、余白があります。

日本橋横山町馬喰町問屋街にも“ぽっかりと空いてしまった穴”があります。問屋さんの使われていない部屋、かつて商品が置かれていたお店の一角、余ってしまったビル。街会社とUR都市機構との協働でエンジョイワークスが先日スタートさせた、さんかく問屋街アップロードと連携体制にある「さんかくプログラム」は、その“ぽっかりと空いた穴”を埋めてくれる方を募集するプロジェクトとも言えそうです。

ちょっとその概要を引用させて頂きましょう。

“本プログラムは、横山町馬喰町街づくり株式会社、UR都市機構、株式会社エンジョイワークスの三者で協力し日本橋横山町・馬喰町エリアの遊休不動産を活用するアイデアのある事業者を募集し、チャレンジを支援するアクセラレーター(事業を早く成長させ、持続的な事業展開へと結びつける取り組みのこと)型事業推進プログラムです。”
“これまで一般的に行われてきた「公募」という形式では発掘することが難しかった、アイデアや想いのある中小事業者が事業を実現し、継続できるような創業支援の仕組みです。エントリーをした事業者は書類審査と面談審査を通過すると、専門知識をもつメンターによるメンタリング(個別アドバイス)に加え、事業の事前検証やテストマーケティングを実施できる現地での実証実験の機会を得ることができます。”

要するに、場所を活用・工夫するエキスパートでなくても良いので、アイデアを出してみませんか?ということ。そのバックアップを街会社とUR都市機構、エンジョイワークスがしてくれます。

ちなみにどういう場所があるのかというと……

日本橋横山町馬喰町問屋街のランドマークになっている、日東タオルさん店舗に隣接している白いビル。ここは何と、1棟丸々空いています。1フロア約45㎡の広さで7階建て。鉛筆のように縦に伸びている細い建物ですが、上り下りは1階奥から続く階段のみ。構造、仕組みをどう工夫するかが肝になりそうです。

こちらは元々、靴工房として使われていたという物件。1フロア約52㎡の5階建てで、ここも1棟空き。しかも、屋上に昇ることも可能だそうです。屋上を使う際、近隣の方々へのケアはもちろん必要になってきますが、どうですか? こんな素敵な余白がたっぷりある建物、ワクワクしてきませんか?

上のふたつに対して、こちらは店舗の一角。カバンのマスターさんという鞄問屋さんの1階、空いている10㎡の一部です。つまり日頃稼働しているところをお借りすることとなるので、オーナーさん、店舗の方との関係構築が重要になります。難易度は少々高いかもしれませんが、物理的にも概念的にも、すでにある懐に入り、その想いや形を受け継ぎながら、次に繋いでいける可能性がある。今回の象徴的な物件とも言えます。

これらの参画エントリー受付は6月30日までと残り日数あとわずか。ギャラリーでもカフェでも工房でも、あるいは一度、子どもの感覚に立ち戻って秘密基地を作りたいといったものでも構いません。まずはパッと閃いたアイデアを投げかけてみませんか? 条件は地域の方々と関わりをもって、以上で紹介した物件を活/生かして頂ける方!


物件の詳細はこちら。|https://hello-renovation.jp/nihonbashi

エントリーはこちらから。|https://ewform.enjoyworks.jp/index.php?id=509


ここで、エンジョイワークス代表の福田和則さんから、「さんかくプログラム」発足に対するコメントをもらいましたので紹介させて頂きます。

“今、ご自身がなされたい、発展させたい事業や活動を、日本橋の問屋街で実現しませんか? 都内各所へはもちろん、新幹線や飛行機で日本全国にアクセスするのにも抜群に便利なこのエリアで、皆さんの参画をお待ちしています。昔ながらの商売の街、実際には存在しない「敷居の高さ」をさらりと越えて頂くための仕組み、それが「さんかくプログラム」です。”

最後に、とある小説をちょっとだけご紹介します。1900年代の初頭から活動していたイギリスの女性作家、ヴァージニア・ウルフによる『波』という作品があります。その物語は、複数の人が幼少期から成人になるまでの思い出などを代わる代わる語っていき、話が紡がれていきます。まさしく寄せては返す波のように。

「さんかくプログラム」の採用組数は1棟まるごとから、1フロア、間貸しまで様々な採用パターンがあるため未定。たまたま同じ屋根の下で借り合わせた人と出会い、当初の思惑とは違う新しい何かが生まれるということも、もしかしたらあるかもしれません。ヴァージニア・ウルフの『波』のように、これから日本橋横山町馬喰町問屋街で紡がれていく新しい物語を一緒に想像しながら作っていきましょう!

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